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輸血の問題点 |
現在我が国では日赤の名前で知られている日本赤十字社が、皆様のご協力(献血)を得て輸血用製剤(保存血、濃厚赤血球液、新鮮凍結血漿、濃厚血小板液など)を作製しています。そのため多くの患者さんが等しく輸血治療を受けることが可能となり、救命ひいては社会復帰可能となっています。しかし、一方では輸血による副作用が社会問題化(エイズ・肝炎など)したのも御存知のところだと思います。輸血は、出血などで体液が失われた時に臓器機能維持・救命のため“やむを得ず”行う治療法であることを理解していただいた上で、輸血治療の現状と問題点ついて簡単にご説明いたしましょう。
【感染】
現在は、血液を介する感染症(エイズ、肝炎など)の予防のために、すべての検査に合格した日赤献血血液製剤を用いています。日赤で用いる血液は27項目の検査に合格していますが、この中に献血者が感染直後で検査が陽性にならない時期(ウィンドウ・ピリオド=ウィルス抗体が検出出来ない時期)に採血された血液が含まれる可能性は否定出来ません(1997年4月、エイズウィルス抗体スクリーニングを開始して以来、初めて感染が確認されました)。あくまで可能性ですが、輸血パック中にHIVウィルスの存在する可能性は2,000万~4,000万本に1本、C型肝炎ウィルスは10万本に1本、と推測されています。また、いくら厳重に検査しても、現在検査方法が確立していないウィルスや未知のウィルス(当然、検査方法も不明)に対しては当然無効であり、100%確実に感染予防が可能な検査法は現在あり得ません。
【輸血による移植片対宿主反応(GVHD:Graft versus Host disease)】
輸血は心臓移植・腎臓移植・骨髄移植などと同じく、臓器・組織移植術の一つであり、ABO式の血液型が適合していても免疫反応が生じることがあります(拒絶反応)。この中に輸血による移植片対宿主反応(一般的にGVHDとよばれます)があり、発症すると救命率の低い病態です。これは輸血した血液のリンパ球が、輸血を受けた患者さんの体内で患者さんの細胞を攻撃する現象ですが、輸血血液を放射線照射する事で予防可能です。GVHDの発生頻度は、輸血パック1つ当たり10万~20万分の1と言われています。
【アレルギー・ショック】
血液型が合致していても、輸血によりアレルギー反応 (じんま疹・溶血(赤血球が破壊される現象)など)を生じる場合があります。ひどいとショック状態(アナフィラキシーショックと言います)になることもあり得ます。これらアレルギー反応の発生は事前の予測が難しく、発生後の適切な対応が大切です。
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対処方法 |
上記のような副作用を避けるために、以下のような対策を当院では採っています。
| 1. |
出血量を少なくし、不必要な輸血は行わない →
GVHDの発生頻度が下がります。
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| 2. |
自己血輸血を極力行う →
無輸血手術の確率が高くなります。
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| 3. |
血縁者からの輸血はしない→
家族の方からの輸血はGVHDの発生する確率が高くなり危険なことが判っています。 |
| 4. |
新鮮血輸血をさける →
今までも極力保存血を使用しました。
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| 5. |
輸血用血液の放射線照射 →
リンパ球を抑制し、GVHDの発症を予防します。
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【自己血輸血】
前述のように、日赤の献血血液(他家血)輸血に伴う危険性を避けるには、『手術前に自分の血液をとっておき(自己血貯血)、手術中・手術後に輸血の必要が生じた際、自分の血液を輸血する(自己血輸血)』のが有効です。
ただ、自己血貯血をしたら他家血輸血の可能性が100%無くなるかというと、そうではありません。心臓血管研究所付属病院では1988年6月より術前自己血貯血を開始しました。手術成績の向上とともに日赤の血液を輸血しない割合が高くなっています。過去7年間(1994-2000年)の初回単独冠動脈バイパス術で、日赤の血液を輸血しなかった患者さんの割合は、術前800ccから1200ccの自己血貯血を行った場合は98.5%、初回弁膜症手術で91.7%、再弁膜症手術で70.9%でした。つまり、自己血貯血をしても、約10%の患者さんでは日赤の献血血液が必要になっています。
【自己血輸血の方法と問題点】
(A)方法と期間
自己血貯血を行うに当たり、いくつか考慮しなければならない点があります。
| 1. |
貧血の有無:貧血の患者さんは治療してからでないと採血できません。貧血の程度によっては貯血が不可能な場合もあります。貧血の治療法には造血剤の服用、造血ホルモン(エリスロポエチン)の注射などがあります。貯血の経過中に貧血が進行した場合も(ヘモグロビン濃度が低くなったら)造血ホルモンの注射を行います。 |
| 2. |
保存期間:採血した血液の保存期間は3週間です。これは自己血も日赤の献血血液も同じです。したがって手術日よりさかのぼって計画的に貯血を行います。 |
| 3. |
貯血の頻度:原則として、1週に1回400mlの採血を行います。体格が小さいと、200~300mlとなる場合もあります。 |
| 4. |
貯血量:上記の制約から、計3回で1200ccの貯血が目標です。もちろん、体格や貧血の程度で、600ml~1200mlの幅ができます。
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| 5. |
外来貯血:原則は、外来通院していただきながら(通常は、術前検査も行いながら)貯血します。もちろん、入院して貯血する場合もあります。
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| 6. |
一般的注意:十分な睡眠と食事をとるようにしてください。採血時にふらつき・めまい・狭心痛を起こされた方が少数おられます。エリスロポエチンの副作用は極めて少ないといわれていますが、一過性の血圧上昇、身体の熱くなる感じを訴えた患者さんがいらっしゃいました。採血後は、しばらく安静にしているようお願いします。
なお、貧血のためにすぐには採血が出来ない場合、時間をかけて貧血を改善してから、手術の準備に入ることがあります。この場合、待機期間が長くなります。
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(B)自己血採血ができない場合
手術を早い時期(緊急手術など)に行わなければならない患者さんの場合など、自己血貯血が出来ないことがあります。この場合でも、できるだけ他家血輸血を避ける努力をいたします。
その方法としては、
| 1. |
手術室で採血する希釈式自己血輸血 |
| 2. |
術中の出血した血液を洗浄して輸血する術中回収式自己血輸血 |
などで、自己血貯血なしでも無輸血で手術出来る可能性(約50-60%)があります。しかし、輸血しないことが生命に関わると判断された場合は、放射線処理した日赤献血血液を輸血させていただきます。こういった際の輸血には、日赤での検査に合格した血液を使用するのが、現時点では最も安全な方法です。
【日赤献血血液の輸血をうけた場合は?】
前に述べた様に極めて稀なことですが、他家血の輸血後はウィルス感染の可能性を否定できません。厚生省は輸血後、概ね2ヶ月の時点でエイズウィルス・肝炎ウィルスのスクリーニング検査を受けることを勧めています。検査も保険適応になっていますので担当の医師が忘れていたら申し出てください。結果についてはプライバシー厳守で対応させていただきます。陽性結果がでた際はさらに確認のための検査が必要になりますので、ご相談させていただきます。
【輸血同意と拒否【】
輸血は出血した際に必要な治療ですので、手術前にご同意をいただだいております。また、出血による重大で、生命危険が及ぶような合併症を避けるために緊急で輸血を行うことがありますので、ご理解お願い申し上げます。
また、何らかの理由にて、輸血を拒否したい場合は、あらかじめ御相談ください。