| 須磨 久善 | Hisayoshi | SUMA, MD |
| 磯村 正 | Tadashi | ISOMURA, MD |
| 堀井 泰浩 | Taiko | HORII, MD |
| 市原 哲也 | Tetsuya | ICHIHARA, MD |
| 佐藤 了 | Toru | SATO, MD |
| 藤崎 浩行 | Hiroyuki | FUJISAKI, MD |
| 西見 優 | Masaru | NISHIMI, MD |
| 鵜川豊世武 | Toyomu | UKAWA, MD |
| 岩橋 健 | Ken | IWAHASHI, MD |
| 斎藤 滋 | Shigeru | SAITO, MD, FJCC |
| 細川 丈志 | Joli | HOSOKAWA, MD |
Abstract
The Batsta operation is intended to improve cardiac function by reducing
the diameter of the left ventricle by excising of a sizable amount of the
left ventricular free wall. Candidates for this operation are patients awaiting
cardiac transplantation due to end-stage dilated cardiomyopathy and those
unsuitable for transplantation because of age, physical or economical reasons.
We performed this operation in 10 patients between December 1996 and October
1997. The baseline indication is left ventricular diastolic dimension ≧70mm
and New York Heart Association(NYHA)class III or IV. There were eight men
and two women aged from 16 to 60 years(mean 46 years). All had non-ischemic
cardiomyopathy including seven idiopathic and one each of hypertrophic,
arrhythmogenic right ventricular and valvular(sarcoidosis)cardiomyopathy.
Eight patients were in NYHA class IV and six needed inotropic drip therapy
prior to the operation. Nine patients had significant mitral regurgitation
and six had tricuspid insufficiency concomitantly.
Eight patients under went mitral valve replacement and one was treated with
mitral valve plasty. Six patients also had tricuspid plasty combined with
partial left ventriculectomy. Eight patients survived. Mean value of left
ventricular end-diastolic diameter was reduced from 77.8mm to 59.8mm, left
ventricular end-diastolic volume index was reduced from 189.3 to 99.2 ml/m2,
ejection fraction was increased from 19.0% to 33.8% and NYHA class improved
from 3.8 to 1.8. Six months later, left ventricular dilatation was not noticed
in four patients examined.
The Batista operation offers real hope for patients with end-stage dilated cardiomyopathy, but we still have much to learn.
( J Cardiol 1998; 31(2): 83-90 )
内科的治療が限界に達し,心臓移植が最後の砦とされる拡張型心筋症に対して,Batistaら(1)の提唱する左室縮小形成術を10例に試みた.その早期成績に関して検討を加えて報告する。
1996年12月一1997年10月の11カ月間に当科にBatista手術の適応について問い合わせのあった拡張型心筋症症例は40例で,そのうち10例に対し,当院倫理委員会の承認のもとに手術を施行した。非施行例の内訳は,
1)現在検討中のもの13例,
2)適応外であったもの[左室拡張末期径が70mm未満,臨床症状がNew York Heart
Association(NYHA)機能分類m度未満,右心不全が主体,病因が特殊なもの(筋ジストロフィー,アミロイドーシスなど),明らかな他臓器障害]10例,
3)手術が適当と考えられたが待機中に全身状態悪化のため当院への転送が不可能となったもの7例で,これらのうち我々の知る限り,8例が3カ月以内に死亡した。
Batista手術の基本的適応基準は,左室拡張末期径70mm以上でNYHA分類m−IV度とした。手術を施行した10例の術前状態は(Table 1)に示すごとくで,男性8例,女性2例,年齢は16−60歳(平均46歳)であった。病因は特発性7例,肥大型拡張相1例,左室拡大を伴う不整脈原性右室心筋症1例,心筋サルコイドーシス(切除心筋病理標本にて判明)を合併した弁膜症1例で,我々は虚血性心筋症には本手術を行っておらず,別にDor左室形成術(2)を現在までに15例に行い,好結果を得ている。
10例中8例がNYHA分類IV度の状態で,このうち6例がcatecholamineの点滴を必要とし,4例が術前に1度は心停止をきたして蘇生しえた例である。術前の左室駆出率は平均19%(7-28%),左室拡張末期径は平均77.8mm(71−88mm),左室拡張末期容量指数は平均189.3ml/m2(147-234ml/m2)で,9例にII度以上の僧帽弁閉鎖不全,6例に三尖弁閉鎖不全を認めた。
手術は常温体外循環下に行い,大動脈遮断下にantegrade warm blood cardioplegiaを注入し,心停止下に左心室を切開した。左室の切除範囲は,通常,前後乳頭筋の間で,回旋枝の鈍縁枝領域の左室自由壁である(Fig.1)。しかし,左室の拡大が著しく,弁輸拡大に伴う僧帽弁閉鎖不全が存在する場合は,僧帽弁置換を行い,同時に乳頭筋領域を切除して,十分な左室の縮小を図った。
弁の逆流が軽度であれば,僧帽弁形成術(Alfieri法(3):僧帽弁の前尖と後尖とを中央で縫合して,僧帽弁の逸脱を防ぐ方法で,この場合,僧帽弁はdouble orificeになる)を行った。
左室の縫合閉鎖には慎重な配慮を要する瘢痕化していない左室壁を縫合する場合,一歩誤まると心拍再開後に縫合部が裂けて大出血を起こし,危篤な事態に陥る。我々は特別に作製した左室縫合針(松田医科工業製)と補強用のウシ心膜を用いて左室壁を2層に縫合し,更に表面に接着剤を塗布して,後出血を防止した。
切除する左室自由壁は通常幅6-9cm,長さ10-15cmで,これにより左室内径は2-3cm短縮された(Fig.2). 10例中9例に僧帽弁修復を行った。8例に弁置換,1例にAlfieri形成術を施行した。6例にDe Vega法による三尖弁形成術を加えた(Table 2)。不整脈予防のため,全例に一週間以上前からamiodarone 200 mgを投与し,副作用のないかぎり,術後も継続投与した。
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| PLV=partial left ventriculectomy; MVR=mitral valve replacement; TAP=tricuspid annuloplasty; MVP=mitral valve plasty; IABP=intraaortic balloon pumping; LVAD=left ventricular assist device. |
平均大動脈遮断時間,体外循環時間ならびに手術時間はそれぞれ68+/-21分(32-156分),152+/-58分(76-270分),280+/-99分(135-460分)であった。大動脈バルーンパンピングや左心補助装置は常に待機したが,使用例はなかった。
早期死亡は2例で,1例は第1例目の53才,男性で,術前catecholamine点滴を要するNYHA分類IV度の状態であった。右肺は肺嚢胞手術後で,左肺にも巨大肺嚢胞が残存しており,肺機能検査上1秒率60%で閉塞性肺障害を示した.手術後左心機能の改善を認めたが,第5病日より肺炎像が出現し,第12病日に呼吸不全で死亡した(4).
他の1例は,第7例目の55歳の女性で,左室のみならず右室の拡大が著明で,心室性不整脈の多発を認めた.手術施行3日前にICUで心停止となったが,蘇生に成功した.手術では左右両室縮小術に加えて僧帽弁置換術と三尖弁形成術を行い,更に右心不全に対してFontanシャントを造設した.無事,体外循環より離脱してICUで集中治療を行ったが,第3病日より発生した右心不全,腎不全などの悪化により,第4病日に死亡した.剖検にて右室の著明な拡大と右室壁の脂肪変性による著しい菲薄化を認め,不整脈原性右室心筋症と診断した.
生存中の8例のうち6例は退院してNYHA分類II度に改善した.最近の2例は院内にて回復期にある(Table 2,Figs.2,3)。
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Note the size of the left ventricle (LV) was apparently smaller after the Batista operation. RV=right ventricle; |
左室の各パラメーターの術前・術後の推移はTable3およびFig.4に示すごとくで,左室駆出率の増加,左室径と左室容量の減少,肺動脈楔入圧の低下が認められ,1回心拍出量は手術前後に明らかな変化はなかった.4例において術後6カ月後の検査が行われ,左室の再拡大は認めず,駆出率にも変化のないことが確認された.第4例目の肥大型心筋症拡張相の42歳,男性において,臨床症状は改善したにもかかわらず,他の症例ほど左室パラメーターに顕著な改善が認められなかった.その理由として,本例では僧帽弁閉鎖不全が認められなかったので,乳頭筋を温存すべく左室部分切除の範囲を小さく取ったために,左室縮小が不十分であった可能性が考えられる.

なお,術後に心室性不整脈が多発した症例はなく,植え込み型除細動器の使用を考慮した例はなかった.逆に明らかな不整脈の減少を認めた例が多く,amiodaroneの効果とともに左室縮小によるwall tensionの減少が関与している可能性も大きいと考えられた。
退院後の投薬に関しては全例amiodarone(アンカロン,200mg/day)を継続投与し,その他に通常ジギタリス(ジゴシン0.125mg/day)とフロセミド(ラシツクス20mg/day)を投与して,紹介先の循環器内科専門の外来にて経過観察を受けている.

左室縮小形成術(volume reduction ventriculoplasty)または左室部分切除術(partial left ventriculectomy)はブラジルで生まれた手術である(1).開発者であるRandas Batistaの名を取って,一般にBatista手術と呼ばれている.本法は1980年代からBatistaの手により行われ,現在までに彼自身により500例以上に施行されているが,世界的に注目を浴びるようになったのはここ2,3年のことである.
本手術は様々な原因により左心室内腔が著しく拡大し,内科的治療に拮抗する心不全を繰り返す重症例に対して行われる.Batistaは,心筋症に基づく心拡大が従来から言われている代償性の機序一すなわち心収縮力の低下を補うために,左室拡張末期容量を増加させて,1回拍出量を維持する一一とは逆に,心拡大そのものがwall tensionを増加させて心筋の収縮カを低下させていると考え,拡大した左室の一部を切除して左室内径を縮小することにより,LaPlaceの法則に従ってその収縮カは向上すると考えた.しかし,心不全の原因が心筋の駆出力不足,すなわち左室壁が菲薄化して心筋の絶対量が足りないことにあると考えていた心臓専門医たちにとって,そのような心臓から,更に心筋を大量に切除するなど到底理解出来るものではなかった.一方,Batista自身の考えによれば,全ての動物の心臓の心腔の容量あるいは内径(diameter)とそれを包む心筋の質量との関係は一定であり,ヘビの心臓もウシの心臓も内腔の大きさと心筋量とのバランスは等しい.したがって何らかの原因によって内腔が拡大し,心不全に陥った心臓の収縮機能を改善させようとする場合,2通りの方法が考えられる.すなわち,心筋壁の筋肉を増加させるか,あるいは現在の筋肉量に相応した内径になるように左心室を縮小すればよい.以上の物理学的思考に基づいて,この大胆なBatista手術は生まれた.
1997年,BatistaとSalernoら(5)は,最近2年間における120例の本手術を検討し共同発表した.年齢は11一74歳(平均53歳)と幅広く,拡張型心筋症の原因としては特発性,虚血性,弁膜症,Chagas症,その他(ウイルス性など)様々である.全例左室駆出率は20%未満で,NYHA分類IV度であった.手術は左室部分切除と同時に弁置換または形成術が51%の症例に行われ,術後30日以内の死亡率は22%,2年生存率は55%であった.平均9カ月の追跡調査で生存者の90%がNYHA分類I-II度に改善した.手術死亡率が比較的高率で,2年生存率が心臓移植に劣る理由として,あまりにも末期状態の患者も多数手術例に含まれたこと,ならびにブラジルでは術後のICU管理と退院後の内科治療が十分ではなかったことなどを挙げており,患者の選択と術後管理に配慮することにより,手術成績はより向上させうると述べている.
一方,最先端の設備と人員を擁するCleveland Clinicからは,McCarthyら(6)が1996年6月から10カ月間に53例に本手術を施行し,このうち50例(94%)が心移植対象例で31例(60%)がNYHA分類IV度であった.対象を特発性の拡張型心筋症に絞っており,虚血性心筋症には本法を行っていない.手術近接期の死亡は1例のみで,術後に左心補助装置を8例に用いた.平均11カ月の追跡期間で更に4例が死亡し,生存率は87%で,72%が心移植の登録リストから除外された.退院後のNYHA分類はI度35%,II度32%,III度27%であった.
Batista手術は心臓移植の適応症例のみならず,年齢,身体状況,あるいは経済的理由で移植を拒否された人々に対して大きな希望を与える手術である.しかし,いまだ不明な点も多く,左室縮小による心機能改善の機序の解明,適切な症例の選択,術前の左室壁の性状の把握,そして術後管理と内科治療の継続に関して実学的研究が望まれている.
術前に超音波検査で計測された左室壁の厚さについて,我々は自験例において,術前,厚さ6-7mmと計測された左室壁が,手術時に左室を切開してみると,lcm以上の厚さを有していることを何度も経験した(Fig.5).したがって,左室拡大に伴って過伸展された左室壁が,手術でwall tensionを低下させることによって,ゴムのごとく厚みを増すものと考えうる.しかし,一方でこれを全ての症例に期待することも危険である.もし左室壁の多くの部分が既に線維化していれば,上述のメカニズムは働かない.それゆえに,本手術施行前に左室壁の性状を詳細に知ることが不可欠となる.どの部分の心筋が厚く,どこが薄いのか,線維化はどこにどの程度存在するのかなどに関して新たな診断法の向上が望まれる.特に本手術においては,心室中隔が術後の心機能に大きく関与する.左室自由壁の大きな部分が切除されることにより,中隔の果たす役割がより重要になるからである.Fig.6は手術時に同一症例から採取した標本で,切除した左室自由壁と残存する中隔の組織をみたものである.切除部の心筋構造が高度に障害されているのに対して,中隔部では比較的健常に保たれている.本症例は術後良好な経過をたどり,心機能の改善を認めた.
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Fig 5 Autopsy specimen of the heart of the first Note the thickness of the septum and free wall of the left |
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Fig.6 Myocytes of the left ventricule |
以上のごとく,Batista手術の成功の鍵は,LaPlaceの法則に基づく左室径の短縮による心収縮力の改善と,悪い心筋を可及的に切除して良い心筋の部分で新しい左室を形成するという,物理学的・生物学的な2つの要因によって成り立っている.
左室縮小後に再拡大(redilatation)は起こるのか,また起こるとすればどの時期かなどの疑問について,いまだ解答は出ていない.Batistaによれば,Chagas病や心筋炎活動期の症例では再拡大をきたしやすく,特発性拡張型心筋症や弁膜症に起因する左室拡大例では縮小後の再拡大は少ない.特発性拡張型心筋症に適応を絞っているCleveland Clinicでは,約1年の経過観察においては再拡大は殆どみられなかったとされている(6).
最後に,当然のことながら,本手術後には継続して綿密な追跡調査を循環器専門医のもとで行うことが必要であり,本手術では術前術後の内科と外科とのより緊密な協力が要求される.
末期的心不全に陥った拡張型心筋症10例に左心室縮小形成術(Batista手術)を施行した.対象は1996年12月1997年10月までの期間,男性8例,女性2例,年齢16-60歳(平均46歳)の拡張型心筋症(特発性7例,肥大型拡張相1例,不整脈原性右室心筋症1例,心筋サルコイドーシスを合併した弁膜症1例)で,8例がNYHA機能分類IV度で,そのうち6例が術前にcatecholamineの点滴治療を要した. 左室部分切除術と同時に,8例に僧帽弁置換術,1例に僧帽弁形成術を行い,このうち6例に三尖弁形成術も同時に施行した.2例が術後に病院死したが,8例が生存中である.このうち最近の2例は入院中で術後回復期にあるが,6例は退院し,臨床症状の著明な改善を認めた.術後3−6カ月の追跡調査において,左室駆出率は術前平均19.0%から術後33.8%ヘと増加し,NYHA分類は術前平均3.8度から術後l.8度へと改善した.左室拡張末期径は術前平均77.8mmから術後59.8mmへ減少し,左室拡張末期容量指数は術前平均189.3ml/m2から術後99.2m1/m2へと減少した.術後6カ月目に再検査を行った4例において,左心室の再拡大は認められなかった. Batista手術は末期心筋症に有効と考える. |
1)Batista RJV,Santos JLV,Takeshita N,Bocchino L,Lima PN,Cunha MA:Partial left ventriculectomy to improve left ventricular function in end‐stage heart diseases.J Cardiac Surg l996;11:96−97
2)Dor V:Reconstructive leftventricular surgery for post-ischemic akinetic dilatation.Sem Thorac Cardiovasc Surg 1997;9:139145
3)Fucci C,Sandrelli L,Pardini A,Torracca L,Ferrari M,Alneri O:Improved results with mitral valve repair using new surgical techniques.Eur J Cardiothorac Surg 1995:9:621-627.
4)Suma H,Horii T,Ichihara T,Hisamochi K,Takuma S,Ishikawa K:New surgical procedure for patients with dilated heart and end-stage cardiac failure(Batista procedure).J Cardiol 1997;29:117-122(in Jpn with Eng abstr)
5)Batista RJV,Verde J,Nery P,Bocchino L,Takashita N,Bhayana JN,Bergsland J,Graham S. Houck JP,Salerno TA:Partial left ventriculectomy to treat end-stage heart disease.Ann Thorac Surg 1997;64:634-638
6)McCarthy PM,Starling RC,Wong J,Scalia GM,Buda T,Vargo RL,Goormastic M,ThomasJD,Smedira NG,Young JB:Early results with partial leftventriculectomy. J Thorac Surg l997;114:755-765