ト リ プ ル C

財団法人心臓血管研究所付属病院スーパーバイザー・本誌同人

須磨久善
Hisayoshi Suma


 心臓病を抱えた人々は命がけで病院に来られます。心臓という命に直結した臓器を治療するエキスパートになるためには、日々研鐙を重ね、数多くの試練を乗り越えてゆかねばなりません。

 私が心臓外科医の心得として、いつも心掛けているのがClean,Clear,Creativeの”トリプルC”です。

 病院ですから当然、清潔のcleanは大事ですが、それだけでなく、スカッとした潔さが大切です。重病に悩む人の命を預かる人間が、歯切れが悪く心が揺らいでいるようではいけません。clearは分かりやすいということです。世の中の仕事には2種類あって、物を相手にする仕事と人を相手にする仕事に分けられます。医療は人間を相手にする仕事の最たるもので、自分が考えていることを相手に分かりやすく伝えられないと、いくら頭の中に知識が詰まっていても使いものになりません。自分の考えを伝えるときには、どれぐらいの時間でどういう言葉を使ってどういうキーワードが大事だということをいつも考えていないと、いざというときにそれが出てきません。医療者は分かりやすく、自分の考えを相手に伝えるトレーニングを積むことが大切です。

 最後のcreativeについてですが、医療には2つの大切な側面があります。1つは教科書に書いてあることがきちんとできる、あるいはほかの病院でできることは自分の病院でもきちっとできるというスタンダードなレベルをしっかりと維持する、ということです。これはとても大切なことですが、それだけでは、ほかでできないことはうちでもできない、昨日できなかったことは明日もできないということになって、医療の進歩がありません。そこでもう一つの側面として、新しい治療法の開発が重要になります。

 これまで心臓外科医の先達が築いてきたさまざまな手術には必ず第一例目というものがあり、新しい試みに挑戦して進歩してきました。基本的なレベルを守りながら、さらに進歩するためにcreativeな気持ちを持つことが医療チームをたくましく育て、病気に悩む人々に新たな希望を提供することにつながるのだと思います。

ハートナーシング2005年第189号(通巻239号)より




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