伸々術
最新治療 あの手この手
移植に代わる心臓手術

 息切れで歩けないほど重症の拡張型心筋症患者の希望は心臓移植だが、日本では難しい。今、その代役を努めているのが、葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)須磨久善院長らの「左室形成術」だ。

 湘南鎌倉総合病院時代の96年、須磨さんはブラジルのR・バチスタ医師の手術を日本に導入した。広がった心臓の筋肉の一部を切り取って縫い縮め、収縮力を強めるというアイディアだ。心臓提供者(ドナー)も免疫抑制剤もいらない。

 しかし、死亡率はかなり高く、欧米では「移植の代用には無理」と下火になってしまった。バチスタ手術は左心室の後ろ側の切り取る心筋が決まっている。しかし、須磨さんらは手術中に超音波で調べ、その患者の心筋の悪い部分を多く取り、いい部分をなるべく残すことにした。また、心臓が収縮しやすい形になるよう工夫した。この新バチスタ手術の手術死亡率(緊急を除く)は4分の1の5%に減った。

 心室中隔や左心室前側が悪いタイプの拡張型心筋症患者のために「中隔前壁除外術」も開発した。

 須磨さんらは98年から移植対象の心筋症患者にこの二つの左室形成術を行っている。今秋まで新バチスタが57人、中隔前壁32人の計89人。緊急手術などの11人が院内で亡くなったが、退院した患者の7割は日常生活に戻っている。

 「左室形成術が普及すれば、貴重なドナーの心臓をより有効に配分できる」と須磨さん。

 京都大学大学院の米田(コメダ)正始教授(心臓血管外科)らも99年から約30人に同類の左室形成術を実施した。新バチスタの患者6人全員が健在という。       <編集委員・田辺功>

                                 2003.11.08 朝日新聞より