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| 狭心症や心筋こうそくなど虚血性心疾患の有力な治療法のひとつ、「冠動脈バイパス手術」で最近,新しい手術方法が注目されている。「ミッド・キャブ(MID-CAB)」と呼ばれ,患者の身体を切る大きさが小さく,人工心肺装置を使わないために心臓がが動いたままの状態で手術する。従来の手術による負担に耐えられなかったり、危険性があって手術ができなかった患者に有効だという。もともとアルゼンチンの外科医が考案し、欧米で広がったが、日本でも、取り組む病院が増えてきている。 |
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心臓の冠動脈バイパス手術は虚血性心疾患の患者の詰まりかけた冠動脈に、他の血管をバイパスのようにつなげ、心臓に十分な血液を送り込めるようにするのが目的だ。 手術では、胸を大きく切り開いて、心臓をいったん停止させる。代わりに人工心肺装置を使って患者の体に血液を循環させながら,冠動脈のバイパスを作る手術をする。 この手術では、血液が人工心肺装置を通る際に異物反応を起こして凝固するのを防ぐ抗凝固剤を使う。このため、出血しやすい脳血管障害の病歴を持つ人は避けざるを得なかった。 そこで、患者への負担を少なくする新しい手術法として登場したのがミッド・キャブだ。ミッド・キャブは「低侵襲バイパス手術」という英語の頭文字をつなげたものだ。 |
血管の部位や状況によってできない場合もあるが,従来のような胸の大きな切開ではなく10センチほどの切開で済む。人工心肺装置を使わず、動いたままの心臓にメスを入れる。詰まったり、狭くなった冠動脈を別の血管につなげる点は従来と同じだ。1994年にアルゼンチンの外科医が発表した。当初は心臓を動いたまま手術することに抵抗感を覚えた外科医が多かった。しかし、欧米の病院で、手術時に心臓の動きを部分的に抑える器具が開発され、成功例が増えてきた。
日本では1996年3月に湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)が初めて導入した。同病院では今年1月中旬までに60例余りを実施。追跡調査した結果、つなげた血管からきちんと血液が流れ込んでいた患者は、九割以上と高い成功率だった。二人が亡くなったが、手術後に腸閉塞(へいそく)を起こすなど,別の病気が原因だったという。
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ミッド・キャブ手術のイメージ図。心臓を走る血管(LAD)に切れ目を入れ,別のところから引っ張ってきた動脈(LITA)をつなげる。=湘南鎌倉総合病院提供
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同病院の須磨久善院長は「高齢などで体力的に手術に耐えられなかった患者にも、冠動脈バイパス手術ができるようになった。傷口も従来の三分の一ほどで済み、一週間以内で退院できる」と話す。須磨院長の試算では、従来のバイパス手術は総費用が三百万円ほどかかるが、新手術は半分ほどですんだ。人工心肺装置を使わない分だけ、手術スタッフの人数も減らせたという。
患者の負担を軽くする手術法の開発に取り組む日本心臓血圧研究所振興会附属榊原記念病院(東京都渋谷区)は96年6月に、この手術を導入した。維田隆夫・心臓血管外科部長は,傷口が小さくて済むので出血がほとんどなく、患者の免疫力に影響する人工心肺装置を使わないので、がん患者に手術をする場合にも有利と見ている。ただ、維田部長は「動いている心臓を扱うので技術的には難しい。実施は心臓手術に慣れた医師に限るべきだろう」と話す。
同様にミッド・キャブを導入している小倉記念擾(北九州市)の延吉正清副院長は「小さな傷口から心臓が動いたままする手術なので、どうしても視野が限られ、血管の、縫合がうまくいかず、術後に詰まってしまう恐れがある」と問題点も指摘する。
「人工心肺装置を便う手術が100%近い成功率であることを考えれば、あえて危険を冒さず,従来のの手術法ができない患者に実施するよう対象を絞るべきだ」と安易な手術にはくぎを刺している。