心臓移植希望者の8割を救えるって本当?

”バチスタ手術”を日本で成功させた外科医 須磨久善さん

 イタリアでの経験を生かし、拡張型心筋症患者を救う”バチスタ手術”を昨年12月、アジアで初めて成功させた。これまでに12例を重ね、2人は手術後に亡くなったが、10人の経過は順調。「あおむけに寝ることもできなかった人が、車を運転するまでに劇的に回復する。医者みょうりに尽きます」

 同症はこぶし大の心臓がマスクメロン大にまで膨らみ、拍動が弱まる難病。発症から5、6年で死に至る。手術はブラジルのランダス・バチスタ博士が考案したもので「左室縮小形成手術」が正式名。心筋を切除して左心室の容積を減らすと、収縮力が増すことに注目。心臓の約3分の1を切り取り、形を整えて縫い縮める。

「この手術の素晴らしさは生に絶望していた患者に希望を与えられること。心臓移植希望者にも適用できる」と目を輝かせる。脳死移植が再開しても、ドナー(臓器提供者)の数が移植希望者に追い付かないことは欧米の実態から明々白々。「日本は内科治療のレベルが高いから、もう限界と施術に踏み切るとき、患者は本当に末期状態だ。それでも米国の例をみても、この手術で8割は救えると思う」

 名医の誉れ高いのは、胃の大網動脈を使った心臓バイパス手術の開発などで国際的評価を得たからだけではない。人柄と技術を信頼し、命懸けの患者が全国から集まってくる。中学2年の時、自分が手術衣を着てメスを握っている姿を夢で見、天の啓示を感じて外科医を志した。次なる夢は?「いつも、どんな患者さんにも希望を与えられる外科医でいること」

■ 大阪医大卒。医学博士。ローマのカトリック大学客員教授を経て湘南鎌倉総合病院副院長、47歳。


  文と写真 編集委員 三木 賢治(1997.11.5 毎日新聞 朝刊 より)


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