人工心肺なしの冠動脈バイパス手術など
三つの革命的な心臓外科手術が出現

狭心症・心筋梗塞

湘南鎌倉総合病院心臓血管外科
〒247 神奈川県鎌倉市山崎1202-1
TEL. 0467-46-1717(代表)

 心臓が働き続けるために冠動脈から酸素と栄養分が送られる。この血管が詰まると心筋梗塞になり、心不全や突然死を招く。

 こうした血管の狭窄による狭心症、心筋梗塞を治療するために、血行をよくする方法は二つある。一つはPTCA(経皮的冠動脈バルーン拡張術)という、風船を入れて血管を拡げる方法。もう一つが体の別のところから血管を持ってきてバイパスをつくるCABG(冠動脈バイパス手術)だ。

 患者の症状、血管の状況によってどちらかが選択されるが、欧米では両方がほぼ同比率で行なわれているのに対し、日本では8対1と圧倒的にPTCAが多い。この理由の1つは、CABGを成功率高く行える外科医師が日本に少ないこと。

 こうした状況の中で湘南鎌倉総合病院副院長の須磨久善医師(元三井記念病院心臓外科部長)は、CABGの名手として名高い。バイパスに使う血管として、これまで一般的だった足の大伏在静脈を使う方法から内胸動脈、さらに世界にさきがけて胃大網動脈を用いる方法を編み出し、手術成績、患者の予後の向上に好成績を収めたのだ。

 須磨医師はその後、2年間ほどイタリアはローマのカトリック大学医学部に客員教授として迎えられ、1人の死亡例もなく多くの手術を行い、ヨーロッパ内外で注目を集めたが、同時に3つの新しい治療法も学んで帰国した。

心臓がバスケットボールのように

 その第一が人工心肺による体外循環を使わず、心臓が動いている状態でCABGを行う方法。これまでは胸を縦に大きく切っていたが、低侵襲バイパス法と呼ばれるこの方法では、胸を横10センチほど切るだけで、内胸動脈をとり、冠動脈につなぐ。手術は短時間で患者の回復も早く、翌日には歩き回れる。医療コスト低減にも役立ち、ここ2年ほどで世界を席巻した。須磨医師が帰国後、日本の第1症例を昨年の3月に行い、いま日本中で注目されている。

 次に新しいのが心臓レーザー治療。冠動脈の動脈硬化が進んでその荒廃が全域に及び、PTCAでもCABGでも狭窄を治すことができない場合、レーザーで心臓の壁に何十カ所か穴を開け、左心室の中に溜まっている血液を直接心筋に吸い込ませて、血が通うようにする。これまで治療が及ばなかった重症の患者にとって新しい希望となるこの治療法は、厚生省の認可が下り、3月には湘南鎌倉総合病院でも第1症例目が成功した。

 そしてもう1つが、昨年12月に須磨副院長が日本で初めて行いニュースになった、心臓を縮める手術。心筋の弱った患者は心臓がバスケットボールのように膨れ上がってしまう。こうなると心臓移植以外に治療法はないが、日本では現在、臓器移植は脳死問題で行き詰まっているし、アメリカでもそのドナー(提供者)不足が深刻な問題だ。そこにブラジルの外科医によって心臓の内径を縮めて動きをよくする方法が開発され、欧米でいっせいに行なわれ始めた。

 須磨医師らのチームはこの手術を二人の末期状態の拡張型心筋症の患者に行い、ともに心臓の動きは目に見えてよくなった。一人は肺炎でなくなったが、2番目に施術した43歳の女性は順調に回復し、驚くほど体が楽になったと喜んでいるという。

 こうした画期的な治療法が続々と出現している心臓血管外科だが、一般の大学病院や総合病院ではそのための組織改革がなかなか進まない。こうした状況の中で湘南鎌倉総合病院が、総合的に心臓病の最先端治療を展開するセンターを、明年葉山町に建設するとの構想があり、その総指揮をとるために須磨医師が副院長として着任した。増える一方の心臓病へ、いよいよ先端医療に取り組む活躍が期待できよう。

      (週刊文春5/15号「病院最前線ガイド '97」こんな病気こんな治療より)



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