最先端の手術と病院の公開を小中学生に向けて始めた
心臓外科医「須磨久善」さん


医療っていいな、志す子が一人でも出れば、僕たちも嬉しい」。50歳。


 「いま心臓の手術をしてますけど見えますか」

 ホールの大画面にバイパス手術が大写しになる。血管から細く血がほとばしる。見守る小中学生が息をのむ。

 手術室でよどみなく手を動かしながら語りかける。心臓に血を送る血管がつまってるので、新しい元気な血管をつないでます。鉛筆のしんぐらいの血管を、髪の毛より細い糸で縫います」

 神奈川県葉山町に最先端の心臓専門病院を開いたのを機に、夏休みから「子供見学会」を始めた。血圧や心電図測定も体験し、白衣に色とりどりの聴診器をぶら下げ、院長の回診にもついて歩く。

 「病院って特殊な状況でないと出会えない。だから病院の方からドアを開けようと。芸術もスポーツも、子供のころ上等な本物に触れることが大事です。医療もそう」

 手がけた手術は約三千。国際的に著名な心臓外科医だ。移植に変わるバチスタ手術(心臓縮小手術)など新手術に挑み、改良。50歳を迎え、社会に医療に役立つことをと「保険で入れる本当に居心地のいい病院をつくること。そして、子どもたちへの病院公開を考えた。

 新病院は、広々として、床や壁などにふんだんに木を使い、全病室、集中治療室からも相模湾の海と空が見える。

 「いい景色を見てると本当に早く治るんだよ。入院が平均2日短くなった」。ふーん、と子どもたちが見上げる。

 「なぜ自分は医者になるのかという原点が希薄になってる気がする。次の世紀、医療は大変な地平に入る。純粋に人を助けたい。人を元気にする仕事をしたい、そういう根っこがあって、医療の世界に入ることが大切になる」

 心の深い所に滴を落とす。この夏四回、四十人が見学に来た。二学期はさらに広く受け入れる。感想文の一つに「いいにおいの病院でした」。

                 - 文 佐田 智子・写真 渡辺 剛士 -

            (朝日新聞平成12年9月8日朝刊「ひと」より)



「子供見学会」についてのお問い合わせは葉山ハートセンター永田・住(すみ)まで
お願い致します。(Tel. 0468-75-1717 Fax 0468-75-3636)

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