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福岡ダイエーホークスの日本一は見事だった。シーズン前の「スパイ疑惑」という汚点は遠くかすんでしまった。ところが、シーズン後がまた、いけない●フリーエージェント(FA)宣言した日本一達成の立役者、工藤公康投手とダイエー側との話し合いは、事実上終わった。ファンは残留を求めて署名運動までしたが、工藤がこの球団にとどまる可能性は、まずなさそうだ●残る残らぬは純粋なビジネスの問題。しかし今度の場合、途中経過の印象が悪すぎる。不信感を口にした工藤に対し、球団はインターネットのホームページで真っ向から反論した。ファンからの抗議が殺到し、わずか2時間で削除。中内オーナーが工藤に謝罪、あらためて残留を求めるドタバタ劇になる●球団は赤字。親会社ダイエー本体の経営も苦しい。リストラに励まねばならぬ。だからか、工藤との交渉では、経費節減の気分が、金額や条件面でむき出しに示されたようだ。それで工藤の気持ちが離れたらしい。この時世、限られたカネをいかに上手に使うかが、経営者の腕の見せどころなのに●話は変わる。心臓外科の権威である須磨久善・湘南鎌倉総合病院名誉院長は、拡張型心筋症に対する心臓縮小手術で、たくさんのいのちを救ってきた。拡大した心臓の一部を切り取ってやると、信じられないほど動きがよくなるのだ●が、当初の成功率は思うようではなかったやがて、病んだ心臓の筋肉も一様に弱っているわけではなく、元気な個所もあると気づく。そこで超音波で本当に弱っている部分を見定め切ることにした。成功率は飛躍的に上がった●須磨さんは語る。「リストラと同じ。アップアップしてる企業が、個々の能力を考えないで社員を減らしたところで、元気にはなりませんよね。いい社員を残すようにしておかないと」=「楽園計画」誌第四号。
(「天声人語」朝日新聞1999年11月13日より)