移植以外の"希望"

拡張型心筋症手術,30例超える


 重症の場合は心臓移植しかないといわれる難病「拡張型心筋症」の治療に,"第二の道"が開けつつある。心臓の一部を切り取り,ポンプとしての機能を回復させる「左心室縮小形成手術」(バチスタ手術)。日本では1996年から始まり,これまで行われた手術も30例以上になった。長期生存率などはまだ不明だが,手術に取り組む医師は「移植以外の選択肢の誕生は患者に希望を与える」と話している。

 拡張型心筋症は心臓を動かす筋肉が伸びたままの状態になり,血液を送り出す機能が弱まる原因不明の難病。バチスタ手術は左心室の一部を切り取り,容積を小さくすることで心臓の機能を回復させる。欧米では1990年代半ばから行われるようになった。

 この手術を日本で最初に行ったのが湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)。数週間前に手術を受けたという愛知県の男性会社員(42)はベットに腰掛け「光が差し込んできたよう。ほっとした」と笑顔を見せた。

 3年前,海外出張から帰国直後,「拡張型心筋症の疑い」と診断された。医師から「心臓移植を考えてみては」言われたが,自分に手が届くとは思えなかった。「海外で移植を受ける費用はとてもない。国内でドナー(臓器提供者)を待っても,いつになるか分からない」と,一時は絶望的な気持ちにもなった。

 手術後はやや息苦しさは残るが,気持ちが前向きになったという。この男性は「9才の娘,6才になった息子の成長を見届けたい」と話した。

 湘南鎌倉病院では須磨久善院長を中心に96年末から取組み,今年5月現在で30人が手術を受けた。

 鹿児島市に住む中崎勲さんもその一人だ。塗料の販売業を営んでいたが,7年前に拡張型心筋症と診断された。3年前に症状が悪化し仕事も辞め,地元の病院で1年8カ月入院生活を送った。175センチの身長で体重が40キロまで落ち,昨年3月に湘南鎌倉病院で手術を受けた。

 現在は日常生活に不自由しないまでに回復し,散歩が日課で,「昔のお得意さんに"見違えるようになった"と言われうれしい」と話す。

 バチスタ手術は今年1月,医療保険が適用されるようになったことから手術を希望するが患者が増え,山梨医大でも先月,生後8カ月の女の子が手術を受け注目された。

                    - 難病患者取材班 -

       [ 毎日新聞(夕刊) 1998.6.20(土) 「難病患者はいま.....」より転載 ]



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