「日本初の心室切除手術」鎌倉の病院

 「左」の三分の一、無事終了

拡張型心筋症の五十三才男性


 難病指定心臓病の拡張型心筋症の患者に対する心室切除手術が2日、神奈川県鎌倉市の湘南鎌倉総合病院(鈴木隆夫院長)で行なわれた。同手術はブラジルや欧米など海外では行なわれているが、日本で実施されたのは初めて。同病院では、手術は無事終了し、心臓機能は手術前より明らかによくなったとしている。国内では心臓移植手術は認められていないが、移植までの橋渡しとなる治療法として注目されそうだ。

 同病院によると、患者は埼玉県所沢市内の男性(53)で五年前から拡張型心筋症の症状に見舞われ、左心室が拡大し、心不全も頻発するようになって余命が短いと診断されていた。手術は同日午前十一時半から、同病院心臓血管外科部長の須磨久善(46)らを執刀医に、同手術の経験が豊富な米・バッファロー大のトーマス・サレルノ教授ら海外からの三人の医師の協力で約4時間かけて行なわれた。

 今回の手術は最初に手がけたブラジル人医師の名をとって「バチスタの手術」と呼ばれ、同国では94年から300件以上実施している。わが国では、国立循環器病センター移植免疫研究室(大阪・千里)も実施準備を進めている。

 拡張型心筋症は、心室を動かす心筋が柔軟性を失う線維化が進行して、心臓が伸びた風船のように機能低下する病気。今回の手術は、線維化が進んだ組織を切り取り、残された心筋の負担を少なくするのが狙いで、肥大した同左心室の約3分の1を切り取った後、縫合した。

 佐野俊二・岡山大医学部教授(心臓血管外科)の話「心室が大きくなるタイプの症例では有効な治療法だ。移植に替わるものではないが、比較的重い患者で実施されており、ケースや患者の条件に応じて行う1つの選択になるだろう」
                            (読売新聞1996.12.3朝刊より)


<追報その1>

 この患者さんは術後6日目に肺炎を発症し、12日目になくなられました。しかし手術の後、心臓の機能は明らかに改善し、肺炎が進行する中でも心臓は元気に動いていました。今後も私たちはこの手術に積極的に取り組んでゆきたいと考えています。

<追報その2>

 本年3月11日、私達はこの心臓縮小手術の第2例目に成功しました。患者さんは43歳の女性で心不全を繰り返す拡張型心筋症で、手術のあとは順調に回復され、”驚くくらい身体が楽になった”と喜んでおられます。術後丁度1カ月目にこの方は大変元気に退院されました。

<追報その3>

 Batista手術の第3例目(56歳男性)と第4例目(42歳男性)にも成功しました。お二人とも拡張型心筋症で心不全を繰り返していました。手術後はお二人とも大変元気になられました。

<追報その4>

 3例目、4例目の方々は無事退院されました。
また、5月20日に第5例目の方にもこの手術を行い、現在、大変元気にしておられます。



心筋症の女性退院

国内3例目の心臓手術  湘南鎌倉総合病院

 心臓移植しか助かる手立てがなかった末期の拡張型心筋症の患者が、湘南鎌倉総合病院(鎌倉市山崎、鈴木隆夫院長)で心臓の一部を切除する手術を受けて11日、元気に退院した。同様の手術が国内で確認されたのは3例目で、この病院の実施した国内初の患者は12日目に肺炎で死亡している。

 患者は横浜市内の43歳の女性で、2年半前から拡張型心筋症の症状に見舞われ、入退院を繰り返した。内科治療も限界だったため、病院側は患者に手術の内容を説明、同意を得た。3月11日に須磨久善・心臓血管外科部長らが執刀、手術は5時間ほどかかった。

 拡張型心筋症は、全身に血液を送り出すポンプ役の左心室が大きくなり機能が低下する。心臓を動かす負担を軽くする切除手術は、海外で3年ほど前から盛んになっており、これまでで約500例が報告されている。

 この患者は左心室全体の3分の1を切除したが、手術直後から心臓が活発に動くようになった。経過は順調で、1週間ほどで歩けるようになり、1カ月で退院を迎えた。

 須磨部長は「余病を併発しなかったのが好結果につながった。それぞれの患者の心臓をどれぐらいの大きさに縮めれば最適なのかの研究が今後の課題だ」としている。

                                  (朝日新聞1997.4.12朝刊より)



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