心臓手術公開 葉山の病院の挑戦

若い瞳に命の鼓動

手術も含めた医療の現場を、小中学生に公閑している病院が神奈川県葉山町にあるという。
院長をしている世界的に有名な心臓外科医、須磨久善さん(51)の「芸術やスポーツ同様、
医療に興味を持つ子どもたちにも、本物を見せることが大事」との方針からとか。一体、 
 どんなものなのか。見学会に参加した。                         

ホールの大画面に心臓手術がライブ中継で映し出
される=神奈川県葉山町の葉山ハートセンターで

 手術の公開は週一回程度。訪れた日は小二から高二まで十六人が来ていた。まず
白衣に着替え、医師から心臓についての講義を受けると、いよいよ手術見学。手術
台の真上にビデオカメラがあり、そのライブ中継を別室の大画面で見る仕組みだ。

「見えますか。これが心臓です。今日は、弁の動きが悪くて血液が逆流し、胸が苦
しくなる患者さんの手術をしています。ここが左心房、これが血液を送り出す弁で
す」

 解説するのは執刀医とは別の医師。ドクドクと脈打つ心臓に、三十二の瞳(ひと
み)はくぎ付けに。

「いま、弁の動きを助けるリングをはめ込んでいます。何本もの糸で間違えないよ
うに縛っていきます。この手術のハイライトです」

 約十五分の中継が終わり、部屋の明かりがつくと、興奮した表情の子どもたちの
間から「すごいね」とため息。”ナマ中継”の迫力に、気分が悪くなり退室した男
の子も。もちろん患者には、あらかじめ承諾を得ており、見せるのは、長い手術の
"ヤマ場”中心。見学時問は、その時刻に合わせて設定してあるという。

 続いて、院内見学へ。放射線室では、電球やボールペンなどをその場でエックス
線撮影した写真を見ながら原理を勉強。「ウランはなぜ放射線を出すの」などとい
う小学生の質問にも、平易に答える。

「心臓は命そのもの。現場で本物を見せることで、純粋に人を助けたい、という医者の原点を体験させたい」と話す須磨久善院長

 手術の公開は週一回程度。訪れた日は小二から高二まで十六人が来ていた。まず白衣に着替え、医師
から心臓についての講義を受けると、いよいよ手術見学。手術台の真上にビデオカメラがあり、そのラ
イブ中継を別室の大画面で見る仕組みだ。

「見えますか。これが心臓です。今日は、弁の動きが悪くて血液が逆流し、胸が苦しくなる患者さんの
手術をしています。ここが左心房、これが血液を送り出す弁です」

 解説するのは執刀医とは別の医師。ドクドクと脈打つ心臓に、三十二の瞳(ひとみ)はくぎ付けに。

「いま、弁の動きを助けるリングをはめ込んでいます。何本もの糸で間違えないように縛っていきま
す。この手術のハイライトです」

 約十五分の中継が終わり、部屋の明かりがつくと、興奮した表情の子どもたちの間から「すごいね」
とため息。”ナマ中継”の迫力に、気分が悪くなり退室した男の子も。もちろん患者には、あらかじめ
承諾を得ており、見せるのは、長い手術のメヤマ場”中心。見学時問は、その時刻に合わせて設定して
あるという。

 続いて、院内見学へ。放射線室では、電球やボールペンなどをその場でエックス線撮影した写真を見
ながら原理を勉強。「ウランはなぜ放射線を出すの」などという小学生の質問にも、平易に答える。

見学コースには本物の機材を使った検査も

 次は体内を透視する心臓エコーを体験。「簡単に言うと山びこの原理。何か物にぶつか
ってはね返ってくる時間の差で体内を見ます」。実験台になった山田祥太君(10)は「自分
の心臓が動くのを初めて見てびっくりした。生きてるなーって感じ」。

 眺めのいい職員食堂での昼食後も、聴診器で互いに心臓の音を聞き合ったり、血圧を測
ったり。

 見学後、子どもたちが書いた感想文には「手術の途中で問違えないお医者さんはすご
い。自分の仕事に誇りを持っているように思えた」(竹原佐知子さん、中3)、「病院特有
のにおいもなく、とても落ち着ける雰囲気。もし心臓が悪かったら私もここに入院した
い」(入江祐加さん、高2)など感激の言葉が並ぶ。この子たちは、病院のホームページな
どで公開を知って申し込んだが、約三分の一がお医者さん志望。



 見学してますます医者になりたくなった、と刺激を受けて帰る子が多い。それこそ、この試みを始めた狙いでもある。興味を持つ子が自分から積極的に本物を見られる場面をつくりたかった」

 こう語る須磨院長は、大阪医科大卒。これまでに内外の病院で三千例の手術を手掛け、心臓移植に代わるバチスタ手術(心臓縮小手術)など数々の新技法も成功させ国際的に有名。前職は湘南鎌倉総合病院の院長だったが「五十歳になったのを機に、何か社会に役立つことを」と昨年五月、同センターを開業した。

 ここがリゾート施設風で、全部の病室(六十床)から海が見え、日当たり良く快適なのも、新たな病院の在り方を模索した結果。「心臓病治療の第一歩はリラツクスして脈がゆっくりになること。ハツピーな環境だと免疫機能は高まるし、働く者も笑顔で患者さんに接することができる」

 開業問もない昨隼の夏休みに始めた見学会は、これまでに約六百人を受け入れ、今も七十人が順番待ち。昼食を出し、さまざまの医療設備も体験させ、相当費用がかかりそうだが、なんと無料。

すべての病室から椙模湾が見渡せる。景色の効能か、
入院期聞が平均2、3目は短くなったという

レントゲン室でエックス線の説明を聞く

「いや、大した費用はかけてません。目に見えるメリツトは何もないかもしれないが、実は、自分たちにもいい勉強。説明も難しい専門用語だらけでもいけない。僕らも見学を受け入れることで成長しています」

 そして、これは社会とのかかわりの重要な柱にも。最近の“病める十代”の事件も踏まえ、須磨さんはこう語る。

「いまは、社会全体で、大人から子どもへのメッセージが必要な時ではないでしょうか。それぞれの人が、自分にできる方法でメッセージを発進すればいい。それが、僕の場合は医療だった。この病院で僕がしようとしていることも、ある意味では新しい手術方法のひとつかも。いいな、と思った人がいろんな所で広げてくれたらうれしい」

  2001.4.10 東京新聞より
<文・井手恵子/写真・石井裕之、市川和宏/紙面構成・池田一成>